絶対、逃がさない!②(短編)
どうして、そんなことしてしまったんだろう。
そう思う。
だけどーーーどうしても、自分を止めることが出来なかったんだ。
陽菜の細い手首をきつく、きつくにぎりしめて、おれはどんどん人気のない場所を求めて、階段を上っていった。
「痛い。はなして」
「いやだね」
陽菜が震える声でいっても、おれは手をはなさなかった。
強引に引きずっていく。
行き止まり、施錠された屋上の前で、乱暴に陽菜の手をはなした。
バンッと、音を発てて、陽菜の身体が扉にぶつかった。
おれを見上げる陽菜の瞳は、大きく見開かれて、桜色の唇は震えていた。
顔色は血の気がなくて、紙のようだ。
肩が小刻みに震えていた。
---それがわかっても、おれはおれ自身を止めることが出来なかった。
もどかしくて、苦しくて・・・わかってほしくて、でも、わかってもらえなくて。
そのまま、怒りにも似た高ぶった感情を陽菜にぶつけた。