絶対、逃がさない!②(短編)
 
 会えない。



 ーーーそう思った。

 あんな最低なことをして会えるはずない。



 そっと唇に触れたキスをしたときはうれしくて最高に幸せな気分だったのにーーー今は消えたい気分だ。

 陽菜の記憶ごと、おれの記憶も消したい。

 あんな強引で、乱暴なキスをして・・・泣かしてしまうなんて、おれは最低最悪なやつだ。

 

 おれは陽菜を避けた。

 朝毎日迎えにいっていたけど、いかなかった。

 どんな顔して会えばいいかわからないし、陽菜だっておれなんかに会いたくないだろう。



 もう、頭んなかぐちゃぐちゃで・・・情けないくらい後ろむきな考えしか浮かんでこない。



 走っているときだけだ。

 なにも考えないでいいのは。

 真っ白な頭で、ただ、風と一緒に、前を向いて走ればいい。


 

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