絶対、逃がさない!②(短編)
 
 そのまま、ぱっと駆け出した。

 横道に入って、すぐにその華奢な姿が、見えなくなった。



 陽菜が逃げるとーーーおれはどうしても、追いかけて、つかまえたくなる。

 それは、半ば習性みたいになっていて、おれは、反射的に走り出していた。

 

 水たまりをふんで、しぶきが身体にかかっても、ためらうことなく、陽菜を追いかけた。



 陸上部の足の速さを侮るなよ。
 
 おれは息を乱すことなく、陽菜に追いついて、その腕をつかまえた。

 陽菜が振り向いた、驚いた顔はしていない。

 たぶん、つかまえられるだろうってわかっていたような、そんな顔だ。



「おまえ! 陽菜、逃げるなっていっただろ!」



 おれはあったら一番に謝るって思っていたのに、どういうわけか、そう陽菜に言い捨ててた。

 陽菜が、こわい顔をして、おれの手を振り払った。

 力をこめていなかった手は、簡単に離れた。
  
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