絶対、逃がさない!②(短編)
 
 おれは陽菜の二の腕をつかんで、立たせた。

 ーーー軽い。

 ふわっと、柑橘系の石鹸の、香りがした。



「やだ。顔見ないで、泣いているし、ぐちゃぐちゃだから」

「そんなことない」



 泣き顔も、怒った顔も、笑った顔もーーーぜんぶ、ぜんぶ、好きだ。



 おれは、涙でぬれた陽菜の目じりにそっとくちづけた。

 しょっぱい味がした。

 

「まじでかわいいーーー陽菜」



 いいながら、ぎゅっと抱きしめる。

 力をこめすぎないように、そっと・・・包み込むように。



「もう、泣くなよ」



 おれはそっと、そういった。

 
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