絶対、逃がさない!②(短編)
「うわぁ。ラーメンかぁ。福田さんって、そんな食べ物じゃなくて、なんていうかフルーツパフェってかんじだよなぁ。
意外だなぁ。でも、それも新鮮でいいな」
すぐに佐藤の視線の先を追う。
麺類の受け取りカウンターのところに、陽菜がいた。
おばちゃんと、何事か笑顔で言葉を交わしながら、トレーの上に、ラーメンと水をのせてもらっていた。
トレーが重いのか、困ったように眉根をよせて、ゆっくりと歩き出す。
こぼさないようにと気をつけているのか、その歩みは亀・・・いや、ペンギンのよう。
今にもトレーを落としそうで、みているおれのほうがドキドキする。
まわりの野郎どももそうだろう。
陽菜はラーメンの丼に集中しているようだから気がついていないようだが、周りにいる男たちはその危なっかしい動きの陽菜に大注目している。
今にも手助けに動こうとしているやつらもいるに違いない。
させてたまるか!
おれは速攻で皿に残っていたご飯と福神漬けをのどに流し込んだ。
がたんと、立ち上がる。
「わりぃ、佐藤。それ、片付けておいて。礼は今度する」
「ちょ、ちょっと、海老原!?」
狼狽する佐藤をよそに、おれは人ごみをすいすいすり抜けていく。