略奪マーメイド。
 不器用ながらにあの娘は化粧を覚え、髪を切り、そうしてどんどんうつくしくなっていった。

 すべてはあたしからあなたを奪うため。

 まるであたしの鏡像のようなあの娘は、以前とはまるで違う。

 あたしはなぜだかそれが悲しかった。

 素朴でばかみたいなあの娘をあわれみながらも、うらやましかったのに。

 あなたを振り向かせるために、だからって、あなたのためだけに振る舞うのはあたしだけで充分だわ。

 ねえ辛いでしょう、唇が紡ぐのは本心じゃないの。姿も微笑みもあなたのものじゃないの。地を踏む足でさえ、どこか覚束ないの。

 あの娘はそんな娘じゃないはずなのに。
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