略奪マーメイド。
 呼び出して頬を張ってやったら、こわいくらい強い眼であの娘はあたしを睨み返した。

 あのときの、ごめんなさいとつぶやいた弱々しさは消えた。

 毒々しい罵りはまるであたしみたい。

 あきらめない、と、あの娘が言うからあたしはまた手を振り上げた。


 あなたはきっともうすぐ気付くでしょう。

 あなたに本当に必要だったのが誰なのか。

 だけどもう遅いわ、あの娘は永遠に帰ってこない。

 あたしが奪ったの、あの愛らしい口調も健気な性格も柔らかな微笑みも、あなたをちょこちょこ追いかける軽やかなあしどりも。

 あなたもうすぐ気付くでしょう、あの娘にあなたがどんなに癒されていたか。
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