幼なじみの甘いレシピ
角砂糖ふたつ
◇ side.Kota ◇
「くあっ! マジうめーっ!!」
夜の7時。台所の天井をあおぎながら、仁王立ちで俺は叫ぶ。
あーもう、風呂上りの牛乳ってなんでこんな美味いんだろう。神が与えし奇跡の飲み物。世界中の牛さんにマジ感謝。
「お、コータ。やっと風呂でたか」
キンキンに冷えた牛乳を飲みながら2階に上がろうとしたら、リビングから親父に呼び止められた。
親父は座布団の上であぐらを書いて、発泡酒とスルメで顔を赤くしている。
「さっき携帯鳴ってたぞ」
「ああ、サンキュー」
「兄ちゃーん、ゲームやろうぜ、ゲーム!」
足に絡み付いてくる弟を無視して、俺はリビングに置きっぱなしにしていたスマホを取る。
“新着メール1件”
ユイからだ。ということは開く前からわかった。友達ならラインで連絡がくるけど、あいつだけは今でもメールなのだ。
時代の波にまったく乗れないユイ。今時の女子高生とはとうてい思えん。