幼なじみの甘いレシピ
野球のゲームを起動させると、弟の目に炎が灯る。
「今日は兄ちゃんに絶対勝ってやるからな」
「へえへえ」
小学4年生の弟相手に、心優しいお兄様はもちろん手加減……なんてするわけもなく。ピッチャー役の弟が投げる球を、容赦なくカッキンカッキン打ちのめしていく。
何を隠そうこの俺様、日頃から恋がうまくいかない鬱憤をこのゲームにぶつけているのだ。おかげで今じゃ軽くプロ並みの腕だ。って全然嬉しくねーわ!
「ち……ちくしょう……。兄ちゃん強すぎだろ……」
弟のやつ、ちょっと涙目になってるし、そろそろ泣き出す頃だな。
なんて思っていると、スマホの着信音が部屋に響き渡った。
「あ、ちょい待ち」
俺が目をそらした隙に、弟の一球が初ストライクを獲得。
「やったーー!!」
ガッツポーズで歓喜する弟を尻目に、俺はスマホを手に取った。