幼なじみの甘いレシピ
わたしは図書室の中を移動し、反対側の窓を開けた。だだっ広いグラウンドが眼下に見える。運動部の人たちももう帰ったらしく、夜の砂漠みたいにガランとしている。
「誰かあーっ! いませんかーっ!」
お腹いっぱいに空気を吸いこみ、暗闇に向かって叫んだ。
「助けてえーっ!」
だけどSOSの声は冬の夜風にさらわれ、むなしく消えていくだけ。冷たい空気が肺の中に流れこみ、胸が苦しくなった。
……どうしよう。どうやら本当に、困ったことになってしまったようだ。
わたしは窓際に座りこみ、途方に暮れながらスマホの待ち受け画面を見つめた。
秋の体育祭のとき、クラスみんなで撮った写真。
お揃いの赤いハチマキを巻いて。
真ん中で笑っているのはコータだ。体育ジャージが泥で汚れてる。……子供みたい。
「……電話。もう一回、してみようかな」
ふとそんな考えが浮かんだけれど、すぐに却下した。
どうせまた、からかわれてケンカするだけだ。そんなもののために充電を使うのはバカげてる。
わたしはスマホを床に置いた。