幼なじみの甘いレシピ
スマホの画面に涙が落ちて、待ち受けの写真がぼやける。
真ん中で笑っている、コータのヤンチャな笑顔……。
口が悪くて、いい加減で、乱暴者で……。だけど誰よりも、ずっとわたしのそばにいたコータ。
いつもふたり、同じ景色を見ていたよね。この待ち受け写真の体育祭……楽しかったなあ。
画面にまた涙が一粒落ちた。と同時に、スマホはピーッと小さな音をたてて、光を失った。
「充電……とうとう切れちゃった」
真っ黒の画面の中に、大好きなコータの笑顔を探すけれど、もうそれはわたしの目に映らない。
「――っ…」
わたしはうなだれて、声も出ないくらいに泣いた。体中から力が抜けて、芋虫みたいに床の上で体を丸める。頬に触れたフローリングが冷たい。
しばらくの間そうしていると、ふと、床を伝う足音に気付いた。
「……コータ?」
わたしはあわてて起き上がる。そして扉に近づき、廊下の物音に耳をすませた。