幼なじみの甘いレシピ


そうだ
恐れないで
みーんなのために

愛と勇気だけが
友達さー♪






「――……ユイっ…!」



真っ白になった頭の片隅で。一番聞きたかった人の声を、聞いた気がした。

そして、扉の開く音も……。


「……コー……タ?」


わたしは涙で濡れたまぶたを持ち上げ、声のする方を向いた。

そこに立っていたのは、まぎれもなくコータ。
彼は息を切らしながらわたしを見つめ、おもむろに口を開いた。


「……お前さあ、やっぱ音程ずれてる」

「……え……?」

「何回言ったら分かんだよ。友達さー、のとこ。ずれてるっつーの」

「…………」

「おい、聞いてる?」

「……っ……ふえっ」


急に鼻の穴がヒクヒクしたかと思うと、わたしは自分でも驚くぐらいの大きな声で、堰をきったように泣き始めた。


「あ、ちょっ……ユイ」


コータが微妙に引いてるけど、そんなの構うもんか。

泣きたい。泣かせろ。わたしは今、モーレツに泣きたいのだ。

大嫌いで大好きな、あなたのその胸で……。


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