幼なじみの甘いレシピ

わたしはコータにしがみついて、「怖かった」とか「ごめんね」とか「大好き」とか、唇が勝手に発する言葉をそのままこぼし続けた。

コータはわたしの頭をなでながら「うん、うん」と、ずっとうなずいて聞いてくれた。

しばらくそうして泣き続け、少し落ち着いてきた頃。

わたし達の間には、奇妙な沈黙が漂っていた。

……テレ臭いような、だけど居心地は悪くないような。それはふたりが経験する初めての空気だった。


「あ、そういえばさ」


コータが突然思い出したように言う。


「さっき、カナエたちに会ったぜ」

「どこで?」

「駅前。あいつら、ホテルJUNから出てきやがった」

「えっ、ホントに?」


わたしはカナエと橋本君の顔を思い描いた。そっか、あのふたりってもうそんな関係なんだ……と想像して、少し顔が赤くなる。


「いいよなあ、あいつらは」

「だってカナエたちはラブラブだもん」

「ユイー。俺らは?」

「バカじゃないの?」


わたしはコータの腕を振りほどき、頭を小突く。コータは少し拗ねたように唇を尖らしているけれど、悪い気分ではなさそう。


わたし達は、わたし達のペースで。

だって、子供の頃からずうっと一緒で、ようやく恋に発展できたふたりだもん。

次のステップに進むのは、もうちょっとだけ時間がかかりそうだ。


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