幼なじみの甘いレシピ
今の音は……まちがいない、鍵をかけた音だ。この時間帯なら用務員さんが戸締りをしているから、わたしに気づかずに閉めちゃったんだ……!
突然のことに混乱した頭で、そこまで理解するのに数秒かかった。
「まっ……待ってください!」
あわてて叫んだものの、遅かった。扉のむこうからは何の反応もなく、わたしの声が暗闇の中で虚しく反響しただけ。
……嘘でしょ。まさか放課後の図書室に閉じ込められちゃうなんて、ツイてないにも程がある。
けどまあ、親か友達に連絡すれば助けてもらえるだろうし、大丈夫だよね……。
わたしは気を取り直し、近くに置いた鞄から手探りでスマホを取り出した。
「えっと、ライト、ライト……」
スマホを使いこなせない女子高生ランキングがあれば上位に食い込む自信のあるわたしは、画面をあちこち操作して、ようやくライトのアプリを発見。
アイコンをタップすると白い光が灯り、周囲の様子がぼんやりと視界に映った。
見慣れているはずの図書室の光景。なのに、暗闇の中に浮かび上がるそれは、まるで別の場所のように不気味だった。