亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――…今まで何回…戦前夜に神様に祈ったかね」

たった一杯の酒を少しずつ、一滴一滴味わいながら、ジスカは曖昧な過去を振り返る。


死にたくない。

復讐するために兵士になっておいて…馬鹿な事を言うが……死にたくない。生きていたい。


そう何度も、震えながら祈っていた。

………何回だったか…。
指を折って数えてみるが……途中から分からなくなった。

はて……ここ二、三年は祈る事なんか無かった。と言うより、祈りさえ忘れていた。

「隊長はしぶといですから、神様も隊長の祈りは後回しでしょう」

部下の一人がそう言うと、周囲の者も一斉に馬鹿笑いし始めた。

第3部隊は何と言うか、隊長も隊員も分け隔てなく、仲間として接しているところがある。
部下が突っ込みと称して隊長をグーで殴るなんてのは、ここでは見慣れた風景だ。

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