亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
20.暁と共に
―――お父様……お父様………何故あんな恐ろしい事をなさるの?……城の魔の者のみならず………お父様にお仕えしていた魔の者……無二の腹心まで…………殺してしまわれるなんて………。……………私の…忠実なる魔の者も……。…………………何よりも残酷なのは……………………………貴方の事…!………貴方まで処刑だなんて!貴方が何をしたと言うの?………きっと嘘に決まっているわ……間違いよ…!お部屋で言っていた独り言よ………私の空耳かもしれないわ。……………………怖いわ……ねぇ…クロウ……………何だか不安なのよ………御家族の方と共に……何処かで身を潜めていた方が良いわ………大丈夫よ………結婚式は別に明後日でなくても良いの……先に延ばしても構わないから…。
―――心配は無い。…………何かの…間違いだろう。………明日辺り…私が陛下に謁見しよう。
―――……………嫌な予感がするの……もうそのまま………戻って来ない様な気がして…………ごめんなさい……縁起でも無い事を………。
―――いいや……いいんだ。ありがとう。
―――………私…口癖の様によく言っているわよね…。………何かを得ようとするならば………犠牲が伴うって……。……………………………でもそれが何なのか…分からない。得るものも、犠牲にするものも。……………………なら、捨てたらどうかしら?……………何も望まないで……最初から捨ててしまえば…………何かが得られるかしら……?
………クロウ……そんな悲しい顔をしないで………お願い………笑って。………………………………笑って。………私の前では………笑って。
―――………何処にも行かないで。