亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
同じ頃、そこから離れた荒野の片隅では、中央程の騒々しさでは無いにしろ、やはり激しい粉塵と大音響が交差していた。


「――………意味分かんない…」

「うっさいダリル!!…あんたさっきからそればっか!!…………うわあぁ!また来た!?」


先程まで、中央辺りで半身になりながらも襲いかかって来る、疲れを知らないイヨルゴスと乱戦を繰り広げていたダリルとイブ。

しかし、思わぬ敵の出現で、二人はこんな隅の方まで移動せざるえなかった。



………避けるだけで必死なのだ。




目にも止まらぬナイフの嵐は、止む気配は無い。



空中から神出鬼没する細かなナイフは、クルリと獲物に刃を向けて四方八方から飛んで来る。
避けてもそれは空気中へ消え、再び何処からか現れる。
始終、動態視力を駆使しなければならないのだ。
一本でも見過ごせば、いつの間にか身体は蜂の巣と化す。





なんとも意地の悪いこの攻撃。

まさか再び………しかも体験するとは、二人は思いもしなかった。

身体を捻ってナイフを避け続けながら、ダリルはナイフの嵐の向こう側にいる人物を見て、また一言。

「…………意味分かんない…」

「分かんなくていい―!!」

顔目掛けて飛んできたナイフを、イブは歯で受け止めた。
その小さなナイフを指先で掴み、敵である人物に向かって思い切り投げた。


真直ぐに飛んだナイフは刃の嵐を通り抜け……………刺さるどころか、二本の指で軽く受け止められてしまった。




二人に睨み付けられている人物は、ナイフを手に、ニコニコと微笑んだ。








『………いけませんね。女の子がナイフなど投げてはいけませんよ、イブ……』

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