亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――…ギリギリ来たんだから良いじゃないっすか―。大目に見て下さいよ」
「ジスカ………この小娘を庇っても良い事はねえぜ」
意地の悪い目でじろりとジスカを見据えるゴーガン。ジスカはそっぽを向いて溜め息を吐いた。
「―――ゴーガン…私語は慎め」
突如、よく通るテノール声が響いた。
ゴーガンは声の主に目をやり、顔をしかめる。
奥の方で独り静かに読書をする男は第一部隊隊長、ベルトーク。
長くウェーブの掛かった、色素の薄い金髪を後で一つに結っている。
細身で色白、整った顔立ちに片目だけ填めた眼鏡というスタイルは、はっとするほどの端麗さだ。
容姿だけはピカイチの優男なのだが、性格の方は良いとは言えない。
頭脳明晰な彼は他人に関心が無く、常に寡黙な男だ。口を開けてもどこか冷たい、棘のある言葉しか出てこない。
「―――ちっ…」
忌々しそうに舌打ちをし、ゴーガンは閉口した。
………この二人…長い付き合いになるそうだが……本当に仲が悪い。
「―――トウェイン、ジスカ………掛けなさい」
本から目を外さぬまま、ベルトークは指示をした。
言われた通り、二人は無言で自分の椅子に座った。
部屋の中央には、真っ黒な椅子が円を描く様に並べてある。
これが軍議の際の形式だった。それぞれの隊長用の六つの椅子が配置されているが、腰掛けるのは四人。
そして部屋の奥にある大きな赤い椅子は、全てを仕切る、総隊長のものだ。
………今朝の軍議は、隊長クラスの四人のみで行う。
「ジスカ………この小娘を庇っても良い事はねえぜ」
意地の悪い目でじろりとジスカを見据えるゴーガン。ジスカはそっぽを向いて溜め息を吐いた。
「―――ゴーガン…私語は慎め」
突如、よく通るテノール声が響いた。
ゴーガンは声の主に目をやり、顔をしかめる。
奥の方で独り静かに読書をする男は第一部隊隊長、ベルトーク。
長くウェーブの掛かった、色素の薄い金髪を後で一つに結っている。
細身で色白、整った顔立ちに片目だけ填めた眼鏡というスタイルは、はっとするほどの端麗さだ。
容姿だけはピカイチの優男なのだが、性格の方は良いとは言えない。
頭脳明晰な彼は他人に関心が無く、常に寡黙な男だ。口を開けてもどこか冷たい、棘のある言葉しか出てこない。
「―――ちっ…」
忌々しそうに舌打ちをし、ゴーガンは閉口した。
………この二人…長い付き合いになるそうだが……本当に仲が悪い。
「―――トウェイン、ジスカ………掛けなさい」
本から目を外さぬまま、ベルトークは指示をした。
言われた通り、二人は無言で自分の椅子に座った。
部屋の中央には、真っ黒な椅子が円を描く様に並べてある。
これが軍議の際の形式だった。それぞれの隊長用の六つの椅子が配置されているが、腰掛けるのは四人。
そして部屋の奥にある大きな赤い椅子は、全てを仕切る、総隊長のものだ。
………今朝の軍議は、隊長クラスの四人のみで行う。