亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………さて…軍議を始めましょうか、諸君」

ぱたん、と本を閉じ、ベルトークは隊長面々に初めて向き直った。
………相変わらず、氷の様な目だ。

顔の前で手を組み、トウェインとジスカに視線を移した。

「………昨夜の偵察に関して、詳細を報告してもらいましょうか…」

二人は姿勢を正し、真剣な面持ちになる。先に言ったのはジスカだった。

「……偵察では、城の西側を見てきました。互いに死傷者無し。部下の殆どは闇溶けをマスターしてるみたいです。……たま―にしくじりますけどね」

「…警報の音で出てきたのはおよそ三十。番犬が五匹でした。…以前より多くなっています。犬はワイオーン。ほぼ成犬で、推定ですが、総数は五十から八十いるかと…。対応は迅速でした。………明らかに、あちらの軍備体制は整っていると思われます」

この、本来は男しかいないはずの軍議。ぴりぴりと張り詰めた空気の中で、トウェインは全く臆する事無く淡々と答える。

「………城の丘から下はどこも平面で、木々も切り倒されてました。…身を潜めにくい様にされております」

「―――…ふん…小癪な真似を…」

ゴーガンが小さくぼやいた。

「報告は以上ですが………近頃、“影”が頻繁に出没しております。………特に戦闘時に」

………すっと、ベルトークは目を閉じた。

「………“影”についてはまた後ほど…。……今日は第一部隊から第三部隊まで、地下で闇溶けの訓練です。監視は私とゴーガン、ジスカで」

………その中に、トウェインの第四部隊は入っていない。

………毎度のことだが。………あからさまに差別されるのは、やはり慣れない。

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