亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
5.誰そがれ(タソガレ)
その二人は、実に仲が良かった。
会う度に笑い合い、互いを見つめ合い、口付けを交わす。
どちらが王位につくのだろうか。
やはり男の方か。
それとも王の血を引く女の方か。
周りはそればかり言っていたが、当の二人は気にもとめていない様で、結婚の日を今か今かと待ちわびていた。
キーツは、この二人が好きだった。
…なんて幸せそうなのだろう。政略結婚なのに…。
―――何だ、キーツ。そんな柱の影にいないで、もっと堂々と見ればいいだろう?
―――…。
―――何恥ずかしがってるんだ……どちらかと言えば見られている俺らの方が恥ずかしい…。
男の向かいに佇む女は、とても綺麗な人だった。微笑み方が、彼女によく似ている。
………彼女も大きくなれば、こんなに綺麗になるのだろうか。
―――羨ましいかぁ?………お前も、相手が決まってるだろうが。…はーん……まだ婚約してないんだな?
―――…うん。
―――…ヘタレ。告白も出来ねえでどうする……がつんと行け、がつんと!将来は俺の義弟になるんだろ?
ぐりぐりと頭を小突いてくる。手を退けようとしても、まだ12のキーツには抵抗出来ない力だ。
…20歳の大人はこんなにも力が強いのか?
……否。この男は論外だ。
―――婚約したら、真っ先に報告な。
屈託無い笑顔で、オーウェンは言った。