亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
軍議が終わりに差し掛かった時、トウェインは意を決して口を開いた。

「―――…ベルトーク隊長…一つ宜しいですか」

以前から溜まっていた不安と苛立ち。

………言っても仕方の無い事だが。言わずにはおれない。

「―――…私は…私はもう、兵士となって六年経とうとしております。………この通り、卑しい女の身でありながら隊長に任命して頂きました。………しかし…何故………何故………」

トウェインの拳に力が入る。その隣で、ジスカはただ見守っていた。

「………何故私だけ……あの城に近付いてはならないのですか…?………何故私だけ…」

敵が守る純白の弧城。大規模な戦闘であの城に進行する時も、偵察の時も、トウェインだけは、近付くことを許されていない。

………その理由が、分からない。

………女だからか?戦争において、女は存在さえ忌み嫌われるのか?

「―――トウェイン」

突き刺す様な、冷たい声。ベルトークの瞳は、真っ直ぐトウェインを映している。

「………無駄口を叩くな。………総隊長から言伝を預かっています」

総隊長……全てはあの方の意思で決まる。あの方には、逆らえない。

「―――城には近付くな、との事です」

始終黙って聞いていたゴーガンは不敵な笑みを浮かべた。
……お前には拒否権など無い、とその目は語っていた。
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