亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
成功しているなら、今ごろはもう城壁内だろう。


………失敗は許さん。


………さて…この邪魔な壁をどうしようか。

眩しい程の明かりを放つ炎。

………まるでそこの城と同じだ。
…明るいのは嫌いだ。

「………第1部隊………全員、ここから出る」

ベルトークは、地面に突き刺していた剣を手に取った。
長い長い、細身の剣だ。

「―――隊長………恐れながら………どうやってこの壁を…」

列の先頭にいた兵士が、眉をひそめて訊いた。

ベルトークは冷たい視線を注ぐ。


「………策など…考えればいくつでもある。………越えられぬなら、壊すまでだ」

巻き込まれたくなければ下がれ、とベルトークは呟き、長い剣を地に降ろす。

低く身を屈め、剣を構えた。


一呼吸おいてから、ベルトークは柄を強く握った。









一瞬、風が流れた。





………ベルトークは動かない。





部下達が息を殺していると………。




前の火の壁に、横一直線に切った様な亀裂が走った。



何が起きたのか分からなかった。













―――ベルトークは、もう動いていたのだ。


目にも止まらぬ、いや、誰一人気付かない程の光速の速さで、壁に向かって一太刀払ったのだ。
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