亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ベルトークとオーウェンの間に、異様な静寂が流れた。
じりじりと間合いを取る二人。
……両者とも、睨み合ったままだ。
オーウェンが、槍に手を掛けた。
瞬間、それまで目の前にいたベルトークが忽然と姿を消した。
息を呑み、辺りを見回す兵士達。
何の前触れも無く。
―――…およそ十人の兵士が吹っ飛んだ。
突風が兵士の群を散らしていく。
その中央に、オーウェン。そしていつの間にかベルトークがいた。
両者とも、互いの武器で押し合っている。
ベルトークの長い剣は、オーウェンの槍の刃に止められていた。
がちがちがち…と鈍い音が鳴る。細かい火花が間で散る。
「―――ほお……だいぶ動きが速くなったではないか………」
「………伊達に幹部なんかしてねえ…よっ!」
オーウェンはベルトークを押し返した。その反動で後ろによろめいたベルトークに向かって、オーウェンは槍を突き出した。
胸部を突いた、と思ったが、そんな手応えは無い。
静かな殺気は背中から感じた。