亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

ベルトークとオーウェンの間に、異様な静寂が流れた。


じりじりと間合いを取る二人。
……両者とも、睨み合ったままだ。

















オーウェンが、槍に手を掛けた。
















瞬間、それまで目の前にいたベルトークが忽然と姿を消した。


息を呑み、辺りを見回す兵士達。










何の前触れも無く。


―――…およそ十人の兵士が吹っ飛んだ。







突風が兵士の群を散らしていく。




その中央に、オーウェン。そしていつの間にかベルトークがいた。







両者とも、互いの武器で押し合っている。

ベルトークの長い剣は、オーウェンの槍の刃に止められていた。

がちがちがち…と鈍い音が鳴る。細かい火花が間で散る。




「―――ほお……だいぶ動きが速くなったではないか………」

「………伊達に幹部なんかしてねえ…よっ!」

オーウェンはベルトークを押し返した。その反動で後ろによろめいたベルトークに向かって、オーウェンは槍を突き出した。


胸部を突いた、と思ったが、そんな手応えは無い。



静かな殺気は背中から感じた。
< 134 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop