亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
振り返る暇など無い。上に構えた槍の柄に、青く光る刃がぶつかる。


真後ろにいるベルトーク。長く、重い剣を片手で扱う。

「―――だが……完璧ではないな?」

感情の無い声で馬鹿にされ、舌打ちしながらオーウェンは身を翻した。

「―――その無駄口…閉じてろ!」

頭上でくるくると回し、力を込めて槍を地面に突き刺した。


オーウェンを中心に、半径十メートルの円を描いて地面に亀裂が走る。

次の瞬間、地面の表面を裏返しにした様に、凸凹とした岩肌の大地が盛り上がった。

巻き込まれた兵士はいとも容易く吹き飛ばされた。



直前で空高く飛翔したベルトークは、突き出た岩の上に降り立った。

「………その馬鹿力……他に使えんのか?」

槍を抜き、オーウェンはにやりと笑った。

「―――生憎………戦いと女守る事以外使わねぇよ…」



ベルトークは、誰もがぞくりとする冷たい笑みを浮かべた。







「―――……守り切れなかったお前が?…………笑わせてくれるわ」









オーウェンの透き通る様なオレンジの瞳が………憎らしげに、ベルトークの姿をはっきりと映した。









「………ああそうさ。………俺はな…」




オーウェンは……笑ってなどいなかった。










「あんたを………殺したくて仕方無ぇ…」
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