亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
一方、反対側の囲いの外でも、暴れ回っている男が一人いた。

巨大な片刃の剣をぶんぶん振り回す。
その一太刀を寸前で避けても、意味は無い。この男の放つ一閃は、生じる風さえも鋭利な刃に変えてしまうのだ。

―――凶刃のゴーガン。

この男は武器を持っても持っていなくとも、存在自体が危険だ。


ゴーガンは凄まじい居合斬りで突風を起こし、火の壁に大きな穴を空けた。

その穴も一瞬だけだったが、ゴーガンは囲いから難無く抜け出した。

外には二重三重に整列した敵兵が待ち構えていたが、ゴーガンからすれば、それは雑魚以外何者でもない。

出合い頭にゴーガンは剣を一振り放った。

びりびりと電流の様な風が吹いたかと思うと、前列にいた兵士五人の頭がずり落ちた。

鏡の様な滑らかな切れ跡から、血飛沫が吹き出す。


ひっ……!、と兵士達は思わず押し合いながら後退する。

「………臆病な糞共め……雑魚は要らねえ。………強い奴はいねぇのか?」

ゴーガンは剣を真横に振った。
こちらに飛び掛かろうとしていたワイオーンが、宙で真っ二つになった。


……興醒めだ。つまらねぇな…。


眉間に皺を寄せて独り苛立つゴーガンの耳に、大地を轟かせる様な大音響が響いた。

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