亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――オーウェンは第2部隊隊長のベルトークと応戦中。………両者とも引きません…」

「………どうだろうな…ベルトークが本気を出せば…オーウェンは負けるかもしれん…」

ベルトークはアレスの使者の中でNo.2の実力の持ち主だ。
少しでも隙を見せれば………そこで終わりだ。

リストは戦場に絶え間なく舞散る激しい粉塵を眺めながら、唇を噛み締めた。

「―――総団長……僕も……僕も応戦に…」

リストは言い掛けた言葉を呑み込んだ。

………オーウェンの立ち去り際に放った言葉が、衝動を押さえた。

………僕は…僕は奴に任されている。
……破るわけにはいかないんだ。


キーツは無表情で、荒れ始めた戦場を眺めた。

自分には、戦場がどうなっているのか分からない。リストの様な能力は無いし、視力は並だ。

………しかし、感じることは出来る。

あの地を砕く音と、殺気漂う空気は、オーウェンの叫びだと。




―――彼の大切なものは、もう無い。

儚い花は、枝を折られて死んだ。












………彼の前で、死んだ。

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