亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
火の囲いの外が、やけに騒がしい。
第1部隊がいる筈の辺りから激しい地響きが聞こえる。
………あん?
………もしかしてうちの部隊だけ遅れてますか?
部下達に気合いを入れさせたまでは良かったが、それから動こうとしない役立たずで口だけの隊長。
………ここから出る方法は思い付いた。だが………出たら出たで戦闘が始まるだろう。
(―――あんまし…殺すのは好きじゃないんだがね…)
実はジスカという青年。殺生は嫌い、という兵士としてあるまじき考えの持ち主だったりする。
…………………。
………出ますか。
ジスカは溜め息を吐き、長い槍を手元でくるくると回した。
「……ジスカ行きまーす。……野郎共、ちょっとどいてろ」
部下達を押しやり、燃え盛る壁の前で構えた。
「………いまいちやる気が起きねえ。お前ら、行け行けコールかなんかして」
隊員、しばし無言。
「―――面倒です」
見事に隊員達の声がはもった。