亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
最早原形を止どめていない、兵士の死体を貪っていた血だらけの牙が、呻き声と共にジスカに向いた。

「―――…槍。…槍ぃぃ―!!槍よこせえ――!そこに刺さってるだろうが!!こっちに投げろぉ――!」

まだ囲いの中にいる部下達に、武器無しのうっかりジスカは悲痛な叫びを上げた。

「―――何です―?」

「お前ら本気で言ってんのかぁ――!?槍を投・げ・ろぉ――!!!」

一匹のワイオーンがジスカに襲いかかって来た。

「―――このっ…まだ食い足りねぇのか…よっ!」

二メートルはあるワイオーンを寸前で避け、その腹に膝蹴りをお見舞いした。……胸部の骨を砕いた感触が伝わった。

「―――ギャンッ…!?」

ワイオーンは物凄い勢いで吹っ飛ばされた。
ワイオーン達は一気に警戒しだした。

(………暇なんか無えのに…)

―――第4部隊はどうなっているのか。

無事に城壁内に侵入出来ていればいいのだが……。
……あいつに限って………。




―――ふと、それは視界に現れた。



真っ赤なワイオーン達の中に、ちらちらと覗く………黒い獣。
それは腹や四肢から血を流し、がくがくと震えながらもワイオーン達を懸命に威嚇する。







―――トゥラ…?
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