亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
いくら城壁を叩いても切り付けても、傷もなければ汚れ一つ付かなかった。


王族に絶対の忠誠を誓っていた国家騎士団は、クーデターを起こした先鋭部隊と対峙した。

この時、国家騎士団は二つの勢力に分かれた。

この後、先鋭部隊は『アレスの使者』と名乗り、革命派として、元々は仲間であった国家騎士団に宣戦布告をした。

国家騎士団は孤城の保守と国家の復興を、そして『アレスの使者』は孤城の奪取による革命を望んだ。

―――それから五年と少し。未だこの内紛は絶えない。

王族虐殺の際の、大規模な戦乱は、国民にも多大な被害を与えた。
殆どの村は焼け落ち、そこら中の屍が真っ黒な“影”と化した。

家、家族、掛け替えのない物全てを失った者、行き場の無い者は、国家復興を…或いは国家への復讐を胸に、それぞれ二つの勢力に集っていった。

―――戦火の中で生き残ったトウェインは、国への激しい憎悪を糧に生きることにした。………生きるために、『アレスの使者』に属した。


一体何人の人間が、この城の下で犠牲になっただろうか。

敵視し合う互いの瞳には、城は何と映るのか。


―――あの城は―――何なのだ。
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