亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
奥へ……奥へ……。
塔の最上階は、丘の上の孤城を囲む様に、向かいの貴族の城と繋がっている。
光り輝く孤城の側を走り、貴族の城へと向かった。
―――上…!
トウェインは構えた。
頭上を、真っ白な何が飛び越えて行った。
―――獣?…
ライマンと同じ位だろうか。
それはトウェインを追い越し、薄暗い道の先へ駆けて行く…。
「お出で、ルア」
闇の中から、男の声が聞こえて来た。
白い獣は尻尾を振って声の方に歩み寄って行く。
………孤城の光が、ぼんやりと男を照らした。
「―――来たか…アレスの使者…殿」
薄ら笑いを浮かべてトウェインを睨む男は、紛れも無い………敵の長、最大の敵。
(―――…キーツ=ファネル=ゲイン…)
ぎりっと歯を食いしばり、トウェインはキーツを見据えた。
………実際前にして見ると………その存在感は著しい。
背も高い。色の異なる両眼が、暗がりの中で異様な程映えている。
……なんだこの男は…。
……気持ちの悪い汗が流れる。自分は恐怖に駆られている?
(……恐怖など……無用…!)
トウェインは帽子を深く被った。