亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

奥へ……奥へ……。

塔の最上階は、丘の上の孤城を囲む様に、向かいの貴族の城と繋がっている。

光り輝く孤城の側を走り、貴族の城へと向かった。







―――上…!









トウェインは構えた。

頭上を、真っ白な何が飛び越えて行った。

―――獣?…

ライマンと同じ位だろうか。
それはトウェインを追い越し、薄暗い道の先へ駆けて行く…。








「お出で、ルア」









闇の中から、男の声が聞こえて来た。

白い獣は尻尾を振って声の方に歩み寄って行く。



………孤城の光が、ぼんやりと男を照らした。












「―――来たか…アレスの使者…殿」











薄ら笑いを浮かべてトウェインを睨む男は、紛れも無い………敵の長、最大の敵。

(―――…キーツ=ファネル=ゲイン…)

ぎりっと歯を食いしばり、トウェインはキーツを見据えた。


………実際前にして見ると………その存在感は著しい。

背も高い。色の異なる両眼が、暗がりの中で異様な程映えている。

……なんだこの男は…。


……気持ちの悪い汗が流れる。自分は恐怖に駆られている?

(……恐怖など……無用…!)

トウェインは帽子を深く被った。
< 177 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop