亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
涼しげな表情のキーツは、ルアという白い獣を優しく撫でる。

「―――…一人か?………良い度胸だ………裏切り者にしては、な」

「………」

トウェインは黙ったまま、じっと構えていた。

「………下では……なかなか面白い殺人兵器が暴れているな……おかげで戦力が削れた………本当に……卑劣な真似しか出来ないのだな?」

皮肉を交えたせせら笑い。…トウェインは空間から武器を出現させた。
それを見ながら、キーツも腰の剣に手を伸ばした。

「―――やる気か?……貴様一人でか……?………フフッ………………なめるな…!」

キーツは剣を抜いた。同時に、トウェインは剣を構えて走った。

真っ直ぐ向かって来るトウェインを見据え、キーツはルアの背中に飛び乗った。

「ルア……行け」

咆哮と共にルアは駆け出した。
ルアの背中で屈み、トウェインに向けて剣先を定める。



トウェインは速度を緩めずに真っ向から挑んだ。

互いに交わる両者。

ルアはトウェインに牙を向けた。
鋭い牙はトウェインの構えていた剣に齧り付く。

その途端、頭上からキーツの鈍い刃が振り下ろされた。

ルアは剣を離さない。トウェインは腰の短剣を掴み、キーツの攻撃を防いだ。

目の前で散る赤い火花。
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