亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――『ローアン』…?

名前だろうか?

………トウェインは顔をしかめた。


………今までこちらに剣を向けていた男が………剣を落とした。







キーツはゆっくりと…一歩一歩………トウェインに歩み寄った。

トウェインは短剣を抜く。






「………ローアン…?………ローアンだろう?………」

……悲しげな表情。
トウェインは後退した。

「……私は……ローアンなどという名では無い!……私は…トウェインだ…!」

…キーツは左右に首を振った。

「………ローアンだ……その青い目も…髪の色も…全部………昔と変わらない………」

「私は…!」

キーツはトウェインの目の前で立ち止まった。


自分を見下ろしてくるその目には、もはや敵意も何も無い。

……あるのは………純粋な悲しみと優しさだ。



「………君は……死んだ筈だ………あの日………君は………ローアン…」



―――ローアン?……ローアンなんて………知らない。

……知らない!


「………私は、違う!私はトウェインだ!私は………!」

………何故だろうか。……この男を見ていると………悲しくなる。

「―――私は………私は………!………貴様など知らない!……貴様は誰だ!………誰だ……!」
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