亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――糞野郎が!!」
静寂を打ち壊した罵声と共に、トウェインは物凄い力で襟首を引っ張れた。
引き離されたキーツに、強力な蹴りが入る。
咄嗟に両腕で防いだキーツは、ザザザ―っと砂埃を撒き散らしながら後退した。
茫然とするトウェインの前に、見慣れた背中があった。
「―――せっかく人が心配して、あんな高い城壁をよじ登ってマリアのパラサイトに殺されかけて塔の長ぁ~い階段を上って来てやったってのに………何してんだお前!」
「………あ………ああ」
苛々度マックスのジスカが、そこにいた。
散々怒鳴るや否や、ばつが悪そうに舌打ちし、帽子を取って無理やりトウェインに被せた。
「……被っとけ………」
ジスカは槍をぶんぶん振り回し、キーツに向かって構えた。
「―――作戦中止。……全員、撤退命令が下された。………早く退かねえと置いてけぼりくらうぜ?…マリアなら大丈夫だ。ベルトーク隊長が暴走を止めた…………ここは俺が食い止めるから…さっさと退け!」
「………しかし…!」
敵を前にして…と言い掛けると………物凄い不機嫌なジスカがこっちを睨んだ。
「―――あ―!たくっ!トゥラ、御主人様を連れてけ!」