亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
この全身灰色の軍服を着用すれば、ライマンと同様の“闇溶け”が可能となる。

しかし、“闇溶け”はそう簡単に出来るものではない。

目を閉じ、全神経を集中させ、空気中の一際濃い『闇』を探すのだ。そしてそれを感覚で引き寄せる。すると、身体が突然冷たくなる。指先から、徐々に中央へ。水中に沈んでいく様な、そんな感覚だ。
だんだんと意識が遠のいていき、自身の体重を感じないほど軽く、冷たくなった時、“闇溶け”は成功だ。

目を開けると、辺りは黒ずんだ霧が広がっている。その状態の時、闇の中、もしくは影の中なら自由に移動可能である。

空気の流れを利用した素早い移動、壁の擦り抜け、影潜み…。
敵の隙を突くには最高の能力だ。

完璧に習得すれば、武器を持ったままの移動や、影の幻影を作ることも出来る。

ただ、“闇溶け”は慣れない内に長時間闇に溶けていると、原形に戻ることが出来なくなる。非常に危険を伴うため、訓練は欠かせない。

兵士達の中にも、原形に戻れず、無残な姿となって発見された者もいた。
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