亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





「―――埃臭ぇ…喉痛ぇ…文字多い…文字なんか嫌いだ………」

「……うるさい。だから言ったんだ。私だけでいい」




だだっ広い資料室。そこは何と言うか図書館だ。

約五千の本が無造作に山積みされている。
最初、白っぽい家具が置いてあると思ったら重ねた本の山だった。
表面に触れると、ぼろぼろと埃の塊が崩れ、砂山の如く一気に崩壊する。

………地理、建築、人口統計、財政記録、料理、誰かの憂鬱日記、緊張しないスピーチ参考ブック、初めての剣術、幸せを呼ぶ壺の見分け方…………。

………多過ぎる。
何の資料ですか?てか、日記がある時点でもう資料室じゃないですよ。

ジスカは途中で飽きてしまい、誰かの憂鬱日記を読みながらその辺に腰掛けた。


「……無いな…」

そんなジスカなど最初から当てにして無かったトウェインは、一人黙々と本の山を崩していく。

「………国民の名簿表なんぞあれば……」

「無理無~理。この国に何人いると思ってんだよ。全部見終えるのに三日はかかるぜ……………この日記の主………頭やべぇな…」

トウェインは巨大な青い本を手に取り、中を確かめる。

「………北の大国……デイファレトの歴史だ………大昔は国交もあったのか」
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