亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
よく見ると、同じサイズの赤い本も埋まっていた。

強引に引き摺りだし、中を確認する。

「………こっちは南西の大国バリアン………こことも国交が……」

大昔は三国共々仲が良かったに違いない。
………しかし今はどうだろう。

バリアンなんぞはその乱行から戦争大国とまで呼ばれ、砂漠化に悩んでいる。
デイファレトはこのバリアンのせいで王政は崩壊し、未だに王族は行方不明だ。

………どこも、自国の事で手一杯。

………誰かが三国を結び付けねば、その内災難を報せるアレスのお告げが下されるかもしれない。

………まずこの戦争を終わらせねば。






ふー…と深く息を吐き、手当たり次第に五、六冊抜き出してその場に座った。

ちょうどいい位置にジスカがいたので、背も垂れ代わりにしようと背中合わせに寄り添った。



………パラパラと頁を捲る音だけが聞こえる。

………平和だ。

そんな気がした。







………昔はよく二人で訓練をして、疲れたら背中合わせに座って休憩していたものだ。




………こいつはこんなに大きかっただろうか?




感じるジスカの背中は、自分より遥かに広く大きい。




昔はそんなに変わらなかったのに。



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