亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~




「―――……お前…小せぇな…」

ぽつりとジスカが呟いた。

………なんだ…お互い同じことを考えていたのか。

「………貴様がでかくなっただけだ」

「………そっか…」



………正直、今更ながら驚いた。

………小さい。しかもびっくりする程細い。…女はそんなもんだけどよ………。


背中合わせに座られた時は、ちょっとどぎまぎした。
……真後ろから香ってくる何とも言えない甘い匂いが鼻をくすぐり、憂鬱日記に意識を集中するのに必死だった。


………俺って小心者だな。




「………なあ…」

「……何だ」

淡泊な返事だ。

「………この戦争が終わったら………お前どうする?………勿論こっちの勝利前提で」

「………」

パラ…と捲る音が聞こえた。

「………この国の礎になる」

「………礎って…」

また難しいことを…。

「……この国のために…出来る事なら何でもする。……豊かな国に」

…そんな時代が来るのか。トウェインは遠い先の未来を、いつも見つめていた。

「………お前は真面目だねぇ…」

「…そう言う貴様はどうなんだ?」

ジスカは頬杖を付き、憂鬱日記を閉じた。

「………俺はなぁ……………この国から離れる」
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