亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
7.獣の嘆き
―――白い霧の中。
―――ああ…夢か…。
―――…あの子がいる…。
赤いドレスの……少女。
………白い花畑の前で背を向いて屈んで居る筈の少女は………。
………自分を見ていた。
静かに佇み、私を見ている。
………少女は何故か……ゆっくりとこっちに歩んで来た。
………金髪の長い髪。スカイブルーの瞳。
すぐ手前にまで来て、少女は立ち止まった。
大きな瞳が私を見上げた。
―――…お前は…誰だ?
―――…私はローアン。
可愛らしい小さな口が動いた。
―――…私のこと、覚えていないの?
少女は…ローアンは微笑みながら小首を傾げた。
―――……そう。………まだ思い出せないのね。
少し残念そうに、笑った。
―――…お前は…。
―――…あのね。
―――………もうすぐ………だから。もうすぐ……時がくるわ。
―――………時?
視界が明るくなってきた。
………ああ…目が覚めるんだ。
―――……そうよ。ねぇ貴女。
―――…私を覚えていないの?