亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
酷な訓練は“闇溶け”だけではない。なにも戦力は人間だけではないのだ。

兵士達の軍服の元となる魔獣ライマンも、部隊の中で戦力となっている。
………問題なのは、ライマンがなかなか人に懐かない事だ。

獰猛なライマンは警戒心が強く、また戦闘を好む。手名付けようとして一体何人が噛み殺されたか。
隊長クラスの四人はなんとか手名付けてはいる。

そんな危険な獣を数匹呼び出し、兵士達に放った。

隊長である人間の命令は聞くように仕付けていた。
………しかし、その内一匹だけ、言う事を聞かずにそっぽを向いて欠伸をしている。
あの泣く子も黙るゴーガンが怒鳴っても、その一匹だけは言う事を聞かない。
………挙句の果てにはゴーガンに唸りだした。

「―――あ。こいつトゥラですよ。トウェインにしか懐いてない奴だ。………何言っても駄目ですよ。」

笑いながら触ろうとしたジスカに対し、何の躊躇も無く噛み付こうとした。
ジスカは光速並の速さで手を引っ込めた。
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