亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――最初に見えたのは、赤くてドロドロしたのがべったりと付いている、白くて丸いのだった。
これは何だろうか。
そう思う前に、気がついたらかぶりついていた。
変な味だったが、不味くはない。むしろ癖になりそうな。
あっという間に真っ白な部分しか無くなってしまって、少し物足りなさを感じていたのを覚えている。
窪んだ二つの穴に、ぶよぶよした丸いのが入っていて、これはなかなか美味だった。
口の中で引っ掛かっている長い毛を吐き出し、指に付いた赤いのを舐め取る。
満腹になった。
改めて自分の周りを見渡すと………辺りはゴツゴツとした洞窟の中であることが分かった。
………此所は何処だろう?
穴の奥から風の匂いがする。
身体を起こそうとすると、ぼてっと横に崩れてしまった。
……うまく歩けない。
なんだか透明なねばねばしたものが全身にくっついているし。
邪魔だなぁ。
岩壁に寄り掛かりながらなんとか立上がる。…その時、後に細い尻尾が有ることに気付いた。先が鋭く尖った尻尾だ。
それを地面に突き刺して立上がると、バランスが取れる事にも気付いた。
二足で歩くことも出来るが、四足の方が楽だ。
……四足でいいや。