亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
風の匂いにつられてふらふらと穴の奥へ歩いて行った。
……鼻につんとくるきつい臭いだが、苦しくはない。
先へ進んで行くと、奥から眩しい光が溢れていた。
あまりの眩しさに、目が眩む。
額の目もぱちぱちと瞬く。
………光の向こうへ歩み出ると、そこには壮大な景色が広がっていた。
地面から吹き出す真っ赤な熱い液体に、濛々と立ち込める煙と黄色い蒸気。
そこら中からぼこぼこ赤い泡が立っていて、弾けた液体が身体に掛かる。
………なんだか暑いなぁ…。喉も渇くし。
何処に行く訳でもなかったが、歩けそうな場所を通って行った。
途中、ぼこぼこいってる溝に落ちそうになったりした。
日が傾く位になった時には、ゴツゴツした岩場の外に出ていた。
足下には僅かだが、柔らかい緑の毛みたいなものが生えている。
………この先には、こういうものがいっぱいあるのだろうか。
空気も澄んでいる気がする。
―――お腹が鳴った。
………あの最初に食べた、赤くて柔らかいのが食べたい…。
何処にあるのだろう?
………食べたいなぁ…。
じゅるっ、と自然に口から唾液が垂れた。
……お腹空いた。