亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

真っ暗になって、明るくなって……眠くなったら木によじ登って寝て……気がついたら日が沈んでて…。

三回くらいこのパターンが続いた。



もうお腹が空いて仕方無かった。

上った木に、赤やら黄色やらの変な形のが付いていて、甘い匂いはしたが、食べようとは思わなかった。

………赤いのが欲しい。あのちょっと苦くて、とろける様な…あれが。

歯が疼く。
爪もなんだか痒い。



その辺の木の幹や石にがりがりと噛んだり引っ掻いたりして紛らわした。



…もうふらつくこと無く、ちゃんと歩ける様になった。

身体も軽い。

ちょっと跳んだら、大木一本は飛び越せる。

枝に止まっていた、ばたばたと飛ぶ変な生き物も、後に回り込んで簡単に捕獲出来た。


バリバリと口の中で粉々にしていく。
………柔らかい部分が少ない。

………もっと大きいのは…。









空からいっぱい水が降ってきた日。


喉が渇いてたから、木の上で口を開けて、落ちて来る水を飲んでいた。




………何処からか、足音が聞こえてきた。

自分以外の足音など、初めて聞いた。

枝に尻尾を絡ませてくるりと逆さになる。

………茂みの奥から、変な生き物が走って来た。

……似てるけど…違う。
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