亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

身体の形や肌の色、歩き方は似ているけど……あれは尻尾が無いし、身体を見たことも無い薄いもので隠している。……まず四足で歩いていない。こっちの方が楽なのに。


手には沢山の木の束を抱えていて、濡れない様にしながら走っている。


………何だろう。何だろうこの生き物。









………おいしそうな匂いがする。







絡ませていた尻尾を解き、走ってくる生き物の前に飛び下りた。




びっくりしたのか、目の前の生き物は目を丸くして立ち止まった。

逃げない様に警戒しながら、じっと観察する。

……大きさはそんなに変わらない。

顔も、額に目が無いのを除けばそんなに変わらない。

………不思議。
噛んだらどうなるかな?
柔らかいかな?
暖かいのかな?



………おいしいのかな?







そんな事を考えていると、この生き物は急に先が尖った棒を出してきた。

…きらきら光る薄っぺらい棒。

何かな?



くんくんと鼻を利かせながら、歩み寄った。

………尖った棒が、目の前で降り下ろされた。






………?………痛い………。

転んでも傷一つ付かなかった皮膚に、大きく切れ目が出来た。

浅い。

じわりと赤いのが出て来た。
< 223 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop