亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
身体の形や肌の色、歩き方は似ているけど……あれは尻尾が無いし、身体を見たことも無い薄いもので隠している。……まず四足で歩いていない。こっちの方が楽なのに。
手には沢山の木の束を抱えていて、濡れない様にしながら走っている。
………何だろう。何だろうこの生き物。
………おいしそうな匂いがする。
絡ませていた尻尾を解き、走ってくる生き物の前に飛び下りた。
びっくりしたのか、目の前の生き物は目を丸くして立ち止まった。
逃げない様に警戒しながら、じっと観察する。
……大きさはそんなに変わらない。
顔も、額に目が無いのを除けばそんなに変わらない。
………不思議。
噛んだらどうなるかな?
柔らかいかな?
暖かいのかな?
………おいしいのかな?
そんな事を考えていると、この生き物は急に先が尖った棒を出してきた。
…きらきら光る薄っぺらい棒。
何かな?
くんくんと鼻を利かせながら、歩み寄った。
………尖った棒が、目の前で降り下ろされた。
………?………痛い………。
転んでも傷一つ付かなかった皮膚に、大きく切れ目が出来た。
浅い。
じわりと赤いのが出て来た。