亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………あれ?
………この赤いのは………。
この匂いは………。
あの赤くておいしい匂い?
………そうか。
皮膚を裂いたら………あれが食べれるのか。
じゃあこの生き物も、赤いのが出るんだ。
………お腹空いた。
……お腹…。
ちょっと屈んで、素早く背後に回った。
落ちて来る水はどれも止まって見えた。
同じ位の背中。
おいしそうな……。
背中に尻尾の先を突き刺すと、生き物は訳の分からない鳴き声を発して目茶苦茶に暴れ出した。
うるさかったから、尻尾で突き刺したまま身体を持ち上げ、その辺の木に向かって放り投げた。
頭を強く打ち付けて、生き物は目を白黒させた。
―――我慢出来ない。………お腹空いた。
喉に爪を立て、肩に歯を食い込ませた。
痛いのか、物凄い声で鳴いた。目からいっぱい水が流れていた。
あちこち動く頭が邪魔だったから、爪を立てたまま首ごともいだ。
……一気に静かになった。
ころころと転がる頭。
……おいしい。