亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
そうか。
最初に食べたあれは、頭だったのか。
あーんと潰した眼球を口に放り込み、舌でその感触を確かめた。
生き物はもう、白い部分位しか残っていない。
……満腹。だいぶ食べた。
身体中に付いた赤い液体は、全部空からの水が洗い落とした。
………しばらくはこれで保つけど……またお腹空くなぁ。
………この生き物は他に、何処にいるんだろう?
次の日、空は晴れていた。
………微かだが、あの生き物の匂いがする。昨日は全部濡れていて匂いが分からなかった。
漂う匂いを辿って、ひたすら歩いた。
暗い森を抜け、深い谷に差し掛かった。
………奇妙な景色だ。
ちまちまと四角い木の塊がたくさん並んでいて、回りには小さな動物が紐で括られている。なんだか騒々しい。木の塊の穴から、昨日食べた生き物が出て来た。大きいのもいれば小さいのもいる。
………髪の色や目の色が違う。
………見れば見る程…自分とよく似ている…。
ふらふらと茂みから歩み出た。
………あの小さいの…おいしそう。
……その時、足に何かが引っ掛かった。