亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

藁やら何やら敷き詰められているジメジメした所に入れられた。

奥の方に、同じ臭いのする生き物が蹲って居た。
長くて緑の髪から、ぎらついた瞳が覗いている。

威嚇されている。


「……あ?……雄と雌を一緒にしていいのかよ…こいつらは年中発情してんだろ?」

「知ったこっちゃ無いさ…檻はもう空きが無いんだ。………おい新入り…肉やるからこっちに来い」

肉、と聞いてちょっとうきうきしながら近付いた。
格子の前で、何故か頭の天辺に毛が無い奴がしゃがんでいた。

「………なんだこいつ……えらくおとなしいな……爪を立ててこないぜ?」

「珍しいのもいるもんだな………おい新入り、人間様に化けてみな」


………何を言っているのだろう。

………ばける?


「……まだ小さいからな…化け方を知らねえんだろ」

「………ほれ…まず尻尾を消せ。やってみな。その次は額の目だ」

………しきりに尻の辺りを指差して来る。

………尻尾?
尻尾がどうかしたのだろうか?





………この生き物に……似せる…。


尻尾を引っ込ませると、案外簡単に消えた。


今度はゆっくりと額に神経を集中させ、力を込めた。





………引っ込んだ様な感覚があった。

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