亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………言う事聞いてるのも凄いが…まだ生まれて一年も経って…無いんだよな?………化けようとしてるぜ…」

「……ああ。………目も尻尾も無くなっちまった…」


………奴等は爪も尖ってない。………こう…引っ込めればいいのかな?

………歯も尖ってない…。

………皮膚も柔らかい…。





………目の中の丸いのは…白じゃなくて黒なんだ………。







……だいぶ似せれた様な気がした。
なんだか酷く貧弱になった気がする。






「………本当に…化けやがった」

「………完璧だ………何処からどう見ても人間だぜ。………十歳前後の子供だ…」

「………しかも…なかなかの上玉だ。よく整ってる………競技で使うのには惜しい…別のルートで売れるか聞いてみないか?」



肉をくれた。

ちょっと固くて酸っぱかったけど、おいしかった。






夜になり、辺りが真っ暗になった。

眠くなかったから、格子に手を突っ込んでぶらぶらさせていたりした。



背後から、鳴き声が聞こえた。







昼間は蹲って隅から離れなかったあの雄が、こっちににじり寄って来ていた。


本能で分かった。





この雄は酷く興奮している。

………嫌気が差した。
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