亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
軍服と同じ灰色の体毛。滑らかな艶のある毛並みだ。
頭を撫でると、猫の様に喉を鳴らす。…どんなに獰猛でも、トウェインにとってトゥラは大きな猫だ。
独りでいる時、物思いにふける時、この子は側にいてくれる。
「………なぁトゥラ…あの城が見えるか?」
遥か彼方の輝きに向かって指差す。トゥラはトウェインに頭を預け、指差す方に目をやった。
「………私はな、トゥラ。………時々、あの城の中に入りたいと思う時がある。………夢を見るのだ……あの城に小さな女の子がいて…」
近頃は特に頻繁に見る不思議な夢。こうやってあの城を眺める度に…思い出す。
「私はその子を後の方からただじっと…見ているのだ………近付けないのだ」
トゥラが鼻を押しつけてきた。
「…女の子はな…城壁の内側にある、小さな花壇の側にいて………花を摘んでいるんだ。………こちらを向いてくれないから…顔が分からない………妙な夢だろう?」
優しくトゥラを撫でる。心地よいのか、トゥラは目を細めた。
「俺は初耳だぜ―?その話」
「―――…ジスカ…」
長い、明るい金髪が風に靡く。
いつの間にか背後で仁王立ちしていたジスカ。夢の話を聞いていたらしい。
………というかこいつ…今訓練中なのでは?
「……さぼりは規律違反だぞ」
「――…レモンキャンディーやるから黙っててくれ」
「………」
トウェインはちょっと迷った末にこくんと首を縦に振った。
頭を撫でると、猫の様に喉を鳴らす。…どんなに獰猛でも、トウェインにとってトゥラは大きな猫だ。
独りでいる時、物思いにふける時、この子は側にいてくれる。
「………なぁトゥラ…あの城が見えるか?」
遥か彼方の輝きに向かって指差す。トゥラはトウェインに頭を預け、指差す方に目をやった。
「………私はな、トゥラ。………時々、あの城の中に入りたいと思う時がある。………夢を見るのだ……あの城に小さな女の子がいて…」
近頃は特に頻繁に見る不思議な夢。こうやってあの城を眺める度に…思い出す。
「私はその子を後の方からただじっと…見ているのだ………近付けないのだ」
トゥラが鼻を押しつけてきた。
「…女の子はな…城壁の内側にある、小さな花壇の側にいて………花を摘んでいるんだ。………こちらを向いてくれないから…顔が分からない………妙な夢だろう?」
優しくトゥラを撫でる。心地よいのか、トゥラは目を細めた。
「俺は初耳だぜ―?その話」
「―――…ジスカ…」
長い、明るい金髪が風に靡く。
いつの間にか背後で仁王立ちしていたジスカ。夢の話を聞いていたらしい。
………というかこいつ…今訓練中なのでは?
「……さぼりは規律違反だぞ」
「――…レモンキャンディーやるから黙っててくれ」
「………」
トウェインはちょっと迷った末にこくんと首を縦に振った。