亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
8.王族
誇り高き国家騎士団。
その長を初めて見たのは、まだ七つの頃だった。
世話係りのアレクセイが僕を彼に紹介した。
彼はそれはそれは紳士的に、恭しくお辞儀をしてきた。
それから彼に剣術を度々教わった。
子供だからと甘やかさず、厳しく指導をしてくれた。
嬉しかった。
お城には父上としか行ってはならなかったから、ローアンとは遊べなかったし、習い事や国の統治についての学問がたんまりとあった。
そんな退屈な日々。
だから、屋敷に彼が来た時は本当に嬉しかった。
―――…いつ国家騎士団に入ったの?
―――…遠い過去です。…忘れました………十年以上も前です。
―――……凄いなぁ。僕も入りたいなぁ……。
―――騎士団に入れるのは12からです。キーツ様はあと五年経ってからでないと…。
―――分かってるよ。…何故、騎士団に入ったの?
彼は一瞬、口ごもった。
幼い僕には、その僅かな沈黙に何が潜んでいるかなど、分かる筈が無かった。
―――……私にも………分かりませんよ。
その時の彼が、どうしても忘れられない。
―――…彼の横顔は何処か、悲しそうだった。