亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………あん?…あ、リスト!法螺貝返せ!声が響かねぇだろ!俺の恋愛講座が!」
どでかい法螺貝を脇に抱え、リストは顔をしかめた。
「うるせぇ!!お前の声は虫の羽音より不快だ!!……馬鹿なことを部下に吹き込む暇あったら訓練くらいさせたらどうだ!法螺貝をこんな事に使うな!……第一お前、全治二週間の怪我人だろうが!」
上半身が包帯でぐるんぐるん巻きのオーウェン。
しかし、元気に回っている。
「法螺貝結構使えるぜ?吹くだけは勿体ない。ほら、よく響くぜ?………《あー、あー、本日は晴天なり…》」
「いくつ持ち歩いてんだ!!!…くだらない話は止めて、さっさと返せ!」
ずかずかと歩み寄るリスト。オーウェンは構わず法螺貝で話続けた。
《……仕方無いか。所詮、初なお子様には理解しがたい事……》
―――子供。
リストはぴたりと足を止めた。……黒い後光が…。
《あーははははは!こらこらリスト君、そんな物騒なものを覗かせるなよ~チェリーボーイめ》
………チェリー?
理解出来ないリストは、首を傾げた。オーウェンは目を光らせた。………ずらりと座らされている兵士達は、いっぱい汗を掻いていた。
《……あれだ。女との》